みょうがをめぐる有名な説に周梨槃特(しゅうりはんとく)の話があります。彼は釈迦の弟子だったのですが、どういうものか自分の名前だけはいつも忘れている。釈迦に名札をかけてもらったことさえ忘れてしまうのです。
自分の名前に気づかないままに生涯を終え、葬られた場所に名もない草が生えました。槃特が名を荷なって苦労したことにちなんで茗荷=みょうがの名がついたそうです。また江戸の町人は語呂が冥加という縁起のよい言葉に通じることから、お正月やお客の持てなしに珍重したようです。
原産地はインドで、年間6500トン前後生産されており、群馬県吾妻近辺が大産地です。花みょうがとみょうがたけに分けて出荷されていますが、主力は花みょうが。ふっくらして紅が乗り、花もちのない、短めのものが高く評価されています。夏の冷むぎ、そうめんに添えられたみょうがの風合いは日本独特のものでしょう。なすとの相性が非常によく、これにきゅうりをくわえて揉みこむと即席漬物が完成します。薬味として楽しむだけでなく、食欲増進、消化促進を目的に食べたいものです。
清熱解毒作用、つまり、熱を下げ毒を制する作用がありますので、近年の猛暑にはほんと、ありがた〜い野菜なんです。夏風邪で喉が痛かったり、声が出なくなったりしたとき、口内炎、出物腫れ物、赤眼、眼のゴロゴロにも使えます。どちらかというと、薬効が大きいのは根の部分です。
みょうがを食べると、物忘れする、という俗言は槃特にまつわる話が歪められて伝えられたのでしょう。物忘れどころか、アルファ・ピネンといった精油分が大脳皮質を刺激し、発汗を促し、呼吸も整え、眠気をさまし頭をスッキリさせてくれます。受験を控えた子供の夜食に一寸添えてみるのもよいでしょう。