日々、元気に過ごすことは誰もの願い。そんな願いをかなえるべく、自分の心と体、食生活とじっくり向き合ってみたくなるお話をどうぞ。
第58回 「江戸ツ子の白米飯とたくあん漬け」
元禄時代になると、江戸の町もにぎやかになり、人口も百万人にふくれ上がっていました。今から、ざっと三百年ほど前。その頃、ヨーロッパ最大といわれたロンドンが八十万人位のものですから、江戸はまぎれもなく世界一の都市だったのです。
元禄の頃になると、食事もぐーんとぜいたくになります。それまでは朝と夕の一日二回の食事が三回に増え、朝めし、昼めし、夕めしと現在と同じようになります。
そして、それまでの玄米飯から白米飯になるのも元禄の頃から。江戸の町に住む武士も町人も大飯食い。
白米を一日に五合も平らげるのです。七五〇グラムで、カロリーにするとざっと二六〇〇カロリーですから驚きます。これだけ白米食が普及すると、玄米を精白する過程で米糠が大量にでます。これを漬け床にして作られたのが「たくあん漬け」という漬け物の大傑作で、今でも食卓の定番になっています。
うまいからといって、白米飯だけ食べるとビタミンB1不足になり、脚気になりやすくなります。糠にB1は豊富に含まれていますから、玄米食の時代には脚気はほとんどありませんでした。
米糠は脚気を防ぐビタミンB1の宝庫。江戸ッ子に人気のあった、たくあん漬けは、実は脚気防止の妙薬でもあったのです。しかも、たくあんには漬けている間に乳酸菌や酵母、酵素も発生しますから、整腸効果も高く、大変健康にもよかった筈です。