日々、元気に過ごすことは誰もの願い。そんな願いをかなえるべく、自分の心と体、食生活とじっくり向き合ってみたくなるお話をどうぞ。
第64回 「「さしみ」は古代食」
「和食」が世界的に脚光を浴びています。無形文化遺産として国際的に認知されようとしているのです。
和食の最大の特徴は、材料が本来持っている自然のままの味を、よく生かすことにあります。持ち味を生かすのに、もっとも適しているのが生食です。
さしみであり、生卵かけごはん、大根おろし、とろろ汁など。最近では、さしみが世界的に人気化して、マグロが高価になっているのはご存知の通りです。
魚介類の「生食」の歴史は古く、女王のヒミコで有名な『魏志倭人伝』の中にも、古代の日本人は「生菜」を好むとあります。「生菜」は「生で食べるおかず」のことですから、現代の「さしみ」。日本人はそんなに古くから、魚の生肉に舌つづみをうってきた民族なのです。
現在の人気ナンバーワンはマグロのさしみ。マグロはさしみばかりでなく、握り鮨も人気ですが、ユニークなのは「ねぎとろ」です。
マグロに細切りのネギをのせて包丁で叩いたもので、そのままワサビ醤油をつけて食べたり、海苔まきの芯にしたりします。ネギの風味がよく効き、独特のうま味があります。ネギ特有の刺激臭である硫化アリルは、頭の回転をよくする上で欠かせないビタミンB1の吸収をよくします。マグロの赤身や中落ち(骨についているうま味の濃い部分)にはビタミンB1が多いですから、「ねぎとろ」は情報化時代の"頭脳食"といってもよいでしょう。